大阪地方裁判所 平成11年(モ)9185号 決定
主文
一 相手方(原告)は、別紙文書目録一から四まで記載の各文書を当裁判所に提出せよ。
二 その余の本件申立てを却下する。
理由
第一申立ての趣旨及び理由等
申立人(被告)ら(以下「被告ら」という。)の申立ての趣旨及び理由は、別紙文書提出命令申立書のとおりであり、これに対する相手方(原告、以下「原告」という。)の意見は、別紙意見書のとおりである。
第二判断
一 基本事件の概要
1 平成一〇年(ワ)第一一四九〇号事件及び平成一一年(ワ)第九二四三号事件
右事件は、原告が、
(一) 木津信用組合が、申立人(被告)株式会社福一不動産(以下「被告福一不動産」という。)との間で、三七億一〇〇〇万円の準消費貸借契約を締結し、申立人(被告)福山通夫(以下「被告福山通夫」という。)が、右契約に基づく被告福一不動産の債務を連帯保証したこと
(二) 株式会社兵庫クレジットサービスが、被告福山通夫に対し、合計三億八〇〇〇万円を貸し付け、被告福一不動産が、右貸付に基づく被告福山通夫の債務を連帯保証したところ、株式会社兵庫クレジットサービスが、木津信用組合に対して右貸付に基づく債権を譲渡したこと
(三) 全国信用協同組合連合会が、被告福一不動産に対して二億円を貸し付け、木津信用組合が、右貸付に基づく債務を保証し、被告福山通夫が被告福一不動産の木津信用組合に対する求償債務を連帯保証したところ、木津信用組合が、全国信用協同組合連合会に対し、右保証契約に基づき、一億四三四四万一〇二〇円を弁済したこと
(四) 原告が、木津信用組合から、右(一)及び(二)の貸金債権並びに右(三)の求償債権を譲り受けたこと
を理由として、被告福一不動産及び被告福山通夫に対し、連帯して六七億三三八七万〇九一三円の支払等を請求した事案である。
2 平成一〇年(ワ)第一一五二〇号事件
右事件は、原告が、被告福山通夫が所有する別紙物件目録一記載の不動産についてされた別紙登記目録一記載の所有権保存登記及び同目録二記載の所有権移転登記がいずれも不実の登記であることを理由として、申立人(被告)寿住建(以下「被告寿住建」という。)に対し、右1に記載した各債権を被担保債権とし、被告福山通夫の被告寿住建に対する所有権移転登記手続請求権を代位行使した事案である。
3 平成一〇年(ワ)一一六三四号事件
右事件は、原告が、被告福山通夫が所有する別紙物件目録二記載の不動産についてされた別紙登記目録三及び四記載の各所有権移転登記がいずれも不実の登記であることを理由として、申立人(被告)山中廣文(以下「被告山中廣文」という。)に対し、右1に記載した各債権を被担保債権とし、被告福山通夫の被告山中廣文に対する所有権移転登記手続請求権を代位行使した事案である。
4 平成一〇年(ワ)第一一六五四号事件
右事件は、原告が、
(一) 申立人(被告)福山佳子(以下「被告福山佳子」という。)が、被告福山通夫が右1記載の債務を返済することができずにいることを知りながら、同人に対する強制執行を免れるため、同人と共謀した上、現金二〇〇〇万円を隠匿したことを理由として、被告福山佳子に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、二〇〇〇万円の支払等を請求するとともに、
(二) 被告福山通夫が所有する別紙物件目録三及び四記載の不動産についてされた別紙登記目録五及び六記載の各所有権移転登記、被告福山通夫が所有する別紙物件目録六記載の不動産についてされた別紙登記目録一〇記載の所有権移転登記及び同目録九記載の抵当権設定登記、並びに被告福一不動産が所有する別紙物件目録五記載の不動産についてされた別紙登記目録八記載の所有権移転登記及び同目録七記載の抵当権設定登記がいずれも不実の登記であることを理由として、右1に記載した各債権を被担保債権とし、被告福山通夫ないし被告福一不動産の被告福山佳子に対する所有権移転登記手続請求権及び抵当権設定登記抹消登記手続請求権を代位行使した事案である。
5 被告らの抗弁
被告らは、抗弁として、
(一) 被告福山通夫は、被告福一不動産、株式会社桜川不動産及び株式会社福寿不動産の代表者として不動産業を営んでいたが、和歌山市友田町四丁目二三番の三及びこれと地続きの一団の土地(以下「本件土地」という。)を、被告福一不動産、株式会社桜川不動産及び株式会社福寿不動産等の名義で取得したところ、被告福山通夫及び同福一不動産は、右1の債務を、本件土地の売却代金によって返済しようとし、その旨を木津信用組合に申し入れたのに対し、木津信用組合は、実際に、本件土地を売却すれば、右1の融資金を返済することが十分に可能であったにもかかわらず、本件土地に設定した根抵当権登記等を抹消することを拒絶し、もって被告福山通夫が本件土地を売却することを妨害した。
(二) 木津信用組合は、被告福山通夫及び同福一不動産に対し、貸付残高を雪だるま式に増大させた上、自己の利益を図る目的で、右両名の支払利息相当分の金額を新たに融資し、これを債権者の支払利息に充当するという、いわゆる「利貸し」を行った。
(三) 木津信用組合は、右(一)及び(二)のような不法行為をしたから、被告らは、原告に対し、右不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として、前記1の債務と対当額で相殺する。
などと主張している。
二 別紙文書目録一から四までの各文書につき
1 まず、別紙文書目録一から四までの各文書については、一件記録によれば、原告がこれを所持していることが認められるので、右文書につき、民事訴訟法二二〇条四号の提出義務があるかどうかについて検討する。
(一) 原告は、別紙文書目録一から四までの各文書は、いずれも民事訴訟法二二〇条四号ハに規定する「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当するものであると主張する。
(二) そこで検討するに、一般に、銀行、信用組合等の金融機関において作成される貸出稟議書は、専ら金融機関内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると当該金融機関の内部における自由な意見の表明に支障を来し、右金融機関の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものであるから、右貸出稟議書は、特段の事情がない限り、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるというべきである。
しかし、一件記録及び裁判所が民事訴訟法二二三条三項に基づいて原告から別紙文書目録一から四までの各文書の提示を受けた結果によれば、別紙文書目録一から四までの各文書は、いずれも木津信用組合において作成された貸出稟議書であり、いずれも専ら木津信用組合の内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていなかった文書であるということはできるものの、右文書が開示されたとしても、所持者である原告の内部における自由な意見の表明に支障を来し、又は原告の自由な意思形成が阻害されるおそれはないというべきであるし、木津信用組合は現在においては清算手続中であることが認められることからすると、現時点においては、木津信用組合についても同様であるというべきである。
なお、原告は、別紙文書目録一から四までの各文書についての主張であるかどうかが明らかではないものの、原告は債権回収目的によって設立された法人であるが、その目的において将来的に貸付行為を行うことも予定しているし、また現実に貸付行為を行ってもいるから、貸出稟議書の開示を認めた場合には、一般の金融機関と同様、原告の現在及び将来の業務遂行に多大な支障を来すと主張する。
しかし、右主張が別紙文書目録一から四までの各文書についての主張であると解したとしても、もとより、右各文書は、原告でなく、木津信用組合が作成したものであることは右のとおりであるから、何ら右判断を左右するものではない。
したがって、本件においては、民事訴訟法二二〇条四号ハに規定する「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当しない特段の事情があるというべきである。
(三) また、一件記録を精査しても、別紙文書目録一から四までの文書が民事訴訟法二二〇条四号イ及びロに規定する文書であることもうかがわれず、これに該当しないものと認められる。
2(一) なお、原告は、被告らが前記一5において主張する不法行為の要件に該当する具体的事実が十分に特定されていない以上、右主張の判断のために別紙文書目録一から四までの各文書が必要であるかどうかを判断すること自体が不可能であるし、むしろ被告らは、原告の手の内を知りたいがため、その手持ち証拠を事前に開示させるという、本来の制度趣旨とかけ離れた意図や、本件訴訟を不当に引き延ばす意図によって本件申立てを行ったと主張する。
(二) そこで検討するに、右の主張の趣旨は必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、被告の不法行為に関する主張の骨子は、前記一5のとおりであって、別紙文書目録一から四までの各文書の証拠としての利用の必要性の有無を判断することができないほどに主張が特定されていないとはいえない上、右主張の骨子及び本件申立てにおける文書の趣旨及び証明すべき事実によれば、右文書について証拠としての必要性がないと認めることはできないし、基本事件の一件記録を精査しても、被告らが本件申立てをするに至った意図が、原告の手の内を知りたいがため、その手持ち証拠を事前に開示させるとか、本件訴訟を不当に引き延ばすというようなものであると認めることもできない。
したがって、原告の右主張は採用することができない。
3 したがって、別紙文書目録一から四までの各文書については、所持者である原告は、民事訴訟法二二〇条四号により提出義務を負うものというべきである。
三 別紙文書目録五の文書につき
別紙文書目録五の文書は、一件記録によっても、その存在及び原告が右文書を所持していることを認めることができないから、被告らの右文書に関する本件申立ては理由がない。
第三結論
以上によれば、被告らの本件申立ては、別紙文書目録一から四までの各文書については理由があり、その余は理由がないから、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 中村隆次 裁判官 長野勝也 裁判官 坂本浩志)
別紙 文書目録<省略>
別紙 文書提出命令申立書<省略>
別紙 意見書<省略>
別紙 物件目録<省略>